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高知地方裁判所 昭和36年(モ)16号 決定 1961年1月28日

申請人 金星製紙株式会社

被申請人 紙パ労連金星製紙労働組合

主文

本件申請はいずれもこれを却下する。

申請費用は申請人の負担とする。

理由

申請人は、「申請人の委任した高知地方裁判所執行吏は、別紙目録及び図面表示の土地上に構築した木柵一個を直ちに除去することができる。同執行吏は、被申請人が高知地方裁判所昭和三五年(ヨ)第二〇六号立入禁止等仮処分命令に違反し、右土地上に木柵等の妨害物を自ら設置し、又は第三者をして設置せしめ、或は組合員又は第三者をしてスクラムを組む等して原料燃料の搬入、製品の搬出又は会社役員等の出入を、実力を以て阻止するのを予防するため、別紙目録及び図面表示の斜線部分のうち、南側及び西側赤線の箇所に柵をめぐらし、出入口を設ける等適当な措置をとることができる。」旨の決定を求め、被申請人は、主文第一項同旨の決定を求めた。

よつて検討するに、申請人において、除去を求める木柵一個は、疎明によれば、昭和三五年一一月一九日頃申請会社通用門前に設置されたものであり、債務名義たる当裁判所昭和三五年(ヨ)第二〇六号仮処分決定のなされた昭和三五年一二月一三日以前であること明らかであるところ、右のように債務名義成立前に設置されたものは、たとえ不作為義務に違反した物的状態であつても、これを除去するには、作為義務として別途に請求するのはともかくとして、違反状態が生じた後の不作為義務に関する債務名義の執行としてなしえないものというべきである。また申請人は、前記仮処分決定において、被申請人に対してなされた受忍義務の違反予防のための物的設備の設置等の措置を求めているが、現在右の措置を認めるのは相当でないと考えられる。

よつて、申請人の本件申請はいずれも理由がないからこれを却下することゝし、申請費用の負担について、民事訴訟法第八九条を適用して主文のとおり決定する。

(裁判官 合田得太郎 島崎三郎 加藤義則)

(別紙省略)

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